公立施設に民間のカフェを誘致する試みは全国にあるが、成功例ばかりではない。官と民の思惑がすれ違い、単なる高い賃料の飲食スペースに成り下がるケースも散見される。
飯塚のモデルが機能しているのは、提携する事業者が「地域の表現の場」としての役割を深く引き受けているからだ。提供されるのは、地元福岡産の食材を使った軽食や、筑豊の焙煎所から仕入れた豆。棚に並ぶ本を持ち込んで読み耽る客に対し、スタッフが急かすような視線を投げることはない。それどころか、夜間にはカフェスペースが小さなアコースティックライブの会場や、市民大学のトークセッションの場へと様変わりする。
民間が持つ柔軟な企画力と、公共施設が持つ圧倒的なアクセスの良さ。その二つが噛み合った結果、平日の夜であっても館内には心地よい人の気配が途切れない。飲食を排除し、厳格な管理に縛られていたかつての図書館像は、ここでは完全に過去の遺物だ。