日本全国の神社から神々が出雲へと集う旧暦10月、他国では神がいなくなるため「神無月(かんなづき)」と呼ばれますが、島根県・出雲地方では「神在月(かみありづき)」と呼ばれます。神々は出雲大社(出雲市大社町)や佐太神社(松江市鹿島町)などで人々の縁結びや来年の収穫について話し合いを行います。そして、その長い滞在の最終目的地となるのが万九千神社です。
万九千神社の読み方は「まんくせんじんじゃ」。地元では古くから「まんくせんさん」の愛称で親しまれています。この社名には「八百万の神々が満願成就し、諸国へ旅立たれる社」という意味合いが込められており、神々が旅立ちの前に集う「最後の宴の館」としての神聖な役目を担ってきました。
神在祭のクライマックスとなるのが、旧暦10月26日の夜に執り行われる「神等去出祭(からさでさい)」です。社殿の奥深くで神職が梅の小枝を手に「からさで、からさで(お立ち去りください)」と唱えながら神輿の扉を叩くと、全国の神々は龍蛇神の先導によって神山である三刀屋山(みとやさん)を越え、それぞれの国元へと飛び立っていきます。静寂の境内に響く祝詞と厳かな祭儀は、出雲の神在月を締めくくる最も神聖な儀式として現代に受け継がれています。