日本循環器学会などの最新治療ガイドラインにおいて、肺塞栓症治療の主軸となるのは「抗凝固薬による薬物療法」です。発症初期には急性期の血栓拡大を防ぐヘパリンの点滴が行われ、全身状態が安定した段階で経口のDOAC(直接作用型経口抗凝固薬)へと移行します。DOACは従来のワルファリンに比べて頻繁な血液検査や納豆などの食事制限が不要であり、安全性と使いやすさが大幅に向上しています。
血圧低下を伴う重篤なショック状態では、血栓を強力に溶かす血栓溶解薬(t-PA)の投与が行われます。さらに、薬物療法だけでは血流再開が間に合わない場合や出血リスクが高く薬剤が使えないケースでは、カテーテルを用いて直接血栓を破砕・吸引するカテーテル治療(血管内手術)や、外科的な血栓摘除術が選択されます。脚からの血栓再飛来を防ぐため、一時的に下大静脈フィルターを留置する処置も確立されています。
治療後に注意すべき点として、血栓が完全に溶けきらず血管内に器質化して残ってしまう「慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)」という難治性の後遺症が挙げられます。歩行時の息切れが数カ月以上続く場合はこの病態が疑われ、肺動脈バルーン拡張術(BPA)などの専門的治療が必要になります。完治後も定期的な経過観察を怠らない姿勢が肝要です。