漢字の「魚偏」には、日本の四季折々の旬や生態を捉えた美しい文字群が存在します。魚偏に春夏秋冬を冠した漢字は、先人たちがどの魚をいつ最も美味しく、または生活の指標として捉えていたかを雄弁に物語っています。
- 春 = 鰆(サワラ):サバ科。春に産卵のために瀬戸内海に来遊し、春を告げる使者として親しまれる魚。
- 夏 = 鮴(ゴリ/メバル):水底に生息する小魚「ゴリ」を指すほか、夏に浅場で活発に活動する「メバル」にこの字をあてる地域もあります。また、夏の大型回遊魚であるシイラには「鱪」の字が使われます。
- 秋 = 鰍(カジカ/イナダ):秋の冷たい清流で美味となるカジカを指します。また、秋を代表する大衆魚「秋刀魚(サンマ)」は3文字表記ですが、季節を象徴する魚の筆頭です。
- 冬 = 鰤(ブリ):アジ科。師走(12月)に脂が乗り切って最も美味しくなることから、「師」の文字を当てて「鰤」となったとされています。
このように漢字一つひとつを紐解くと、日本人が古来より自然のリズムを鋭敏に感じ取り、魚の生態と暦を密接に結びつけて暮らしてきた歴史的背景が浮き彫りになります。