物語の原点は、どこまでも噛み合わない悲劇にある。主人公の小学生・雲母坂しずかは、家庭環境の崩壊と同級生の久世まりなから受ける熾烈ないじめにより、すでに心を摩耗させていた。首に残る縄の痕、唯一の心の拠り所である愛犬チャッピー。そこに現れたタコピーは、能天気な「ハッピー道具」で事態を打開しようと試みる。だが、宇宙人のピュアすぎる善意は惨劇の引き金を引くことになった。チャッピーの死、まりなの突発的な殺害、そして逃避行。破滅を回避するため、タコピーは時間を巻き戻す「ハッピーカメラ」を起動する。
繰り返されるタイムループのなかで明かされたのは、まりな側が抱える地獄だった。しずかの父親とまりなの母親が不倫関係にあり、家庭が崩壊したことでまりなもまた、狂気へと追い詰められていたのだ。被害者であり加害者でもある少女たちの憎悪は絡み合い、ループを何度重ねても悲劇は形を変えて再発する。自身の「会話の拒絶」こそが最大の罪(原罪)だと気づいたタコピーは、自らの存在と記憶を犠牲にして最後のループを実行した。タコピーが存在しない改変世界。そこでは、しずかとまりなが土まみれで殴り合い、感情をぶつけ合う姿があった。親友にはなれない。それでも「他者」として対峙すること。タイザン5氏が描いた真の救いとは、安直なハッピーエンドではなく、痛みを伴う対話の始まりだった。