実際の給与台帳上で法定福利費を算出する際、基準となるのは「支給された額面給与そのもの」ではありません。社会保険(健康保険・介護保険・厚生年金・子ども子育て拠出金)では、標準報酬月額の決定と計算手順に厳密に従う必要があります。
標準報酬月額とは、基本給に役職手当、通勤手当、残業代などの各種諸手当を加算した「報酬」を、一定の幅で区切った等級(健康保険は第1級〜第50級、厚生年金は第1級〜第32級)に当てはめた仮想金額です。原則として毎年4月〜6月の3カ月間の平均給与を基に決定する「定時決定(算定基礎届)」によって決定され、その年の9月から翌年8月まで適用されます。大幅な昇給や降給があった場合は「随時改定(月額変更届)」を行います。
ここでは、実務イメージを掴むために、具体的な法定福利費の計算式とシミュレーションを行います。
【シミュレーション条件】
・従業員:35歳(介護保険非該当)
・勤務先:東京都のIT系一般企業(協会けんぽ東京支部加入、料率9.98%)
・標準報酬月額:300,000円(総支給額と同額と仮定)
・雇用保険区分:一般の事業(事業主負担率:9.5/1000=0.95%)
・労災保険料率:一般事務・IT業種(事業主負担率:2.5/1000=0.25%)
1. 健康保険料(会社負担分):
300,000円 × 9.98% ÷ 2 = 14,970円
2. 厚生年金保険料(会社負担分):
300,000円 × 18.300% ÷ 2 = 27,450円
3. 子ども・子育て拠出金(全額会社負担):
300,000円 × 0.360% = 1,080円
4. 雇用保険料(会社負担分):
300,000円 × 0.95% = 2,850円
5. 労災保険料(全額会社負担):
300,000円 × 0.25% = 750円
【会社負担・法定福利費合計額】:47,100円(月額)
従業員の総支給額300,000円に対し、会社は毎月47,100円(人件費の15.70%)の法定福利費を別枠で負担しています。従業員が40歳を超えて介護保険対象者となった場合は、さらに月額約2,400円〜2,700円程度が加算されます。賞与支給時も同様に「標準賞与額(上限あり)」に対して同一の保険料率を乗じて計算するため、賞与時期の資金繰り計画には法定福利費の上乗せ分を必ず組み入れなければなりません。