1995年8月のデビュー以来、「Feel Like dance」「Joy to the love」「SWEET PAIN」「DEPARTURES」と破竹の勢いでミリオンセラーを連発していたglobe。その中心にいた小室哲哉は、当時過密を極めるツアースケジュールと並行して、1stアルバム『globe』のレコーディングを国内外のスタジオで進めていました。
「Precious Memories」の誕生にまつわる小室哲哉の作曲エピソードとして語り継がれているのは、ダンスビート主体のアルバム構成において「聴き手の心に最も深く突き刺さるアコースティックな叙情詩を1曲残す」という明確な狙いでした。当時のインタビューや関係者の証言によると、小室はシンセサイザーの打ち込みを極力抑え、自らアコースティックピアノに向き合い、コードを一つひとつ確かめながらメロディを一気に書き下ろしたとされています。
ダンスミュージックの騎手として時代の最先端を走っていた小室哲哉が、自身の青春時代に聴き親しんだフォークやニューミュージックの叙情性を90年代最先端のポップスへと昇華させた瞬間でした。この楽曲の完成によって、アルバム『globe』は単なるダンスポップアルバムの枠を超え、普遍的な音楽作品としての深みを獲得することになりました。