国立競技場はなぜ隈研吾案に?木材劣化の真相と2026年の現在地

国立競技場はなぜ隈研吾案に?木材劣化の真相と2026年の現在地

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隈研吾氏が掲げたデザインコンセプトの中核は「杜のスタジアム」です。近代的な鉄骨構造と伝統的な木造技術を融合させたハイブリッド構造を採用し、建物の外周を幾重にも重なる「軒庇(のきびさし)」が包み込んでいます。この意匠は、法隆寺の五重塔などに見られる伝統工法に着想を得たもので、強い日差しを遮りながら柔らかな陰影を生み出します。

使用された木材には、極めて象徴的な意味が込められています。軒庇の木材には、全国47都道府県から調達された国産スギ材(沖縄県のみリュウキュウマツ)が使用されました。スタジアムの方角に合わせて各地域から届いた木材が配置されており、例えば北側には北海道や東北の木材、南側には九州や沖縄の木材が配されています。使用された地域材の総量は約2000立方メートルに及びます。

隈研吾氏は東京大学工学部建築学科を卒業後、コロンビア大学客員研究員などを経て、コンクリートや鉄が主役だった20世紀建築への反省から「木や自然素材を活かした負ける建築」を提唱し続けてきました。サニーヒルズ南青山や根津美術館など数々の名建築を手掛けてきた同氏の建築哲学が、国家の象徴的モニュメントにおいて最大限に具現化された瞬間でした。

山口 彩花
著者

山口 彩花

グルメと旅を愛するフリーライター。全国各地の隠れた魅力を独自の視点から紹介します。