ハムとベーコンを区別する第一の要素は、使用される豚肉の部位です。農林水産省が定めるJAS規格によるハムとベーコンの定義を確認すると、原料肉の部位によって厳格な品目分類がなされていることが分かります。
日本で最も広く流通している「ロースハム」は、豚の胸部から腰にかけての背側の肉である「豚ロース肉」をブロック状に整形して作られます。一方、骨付きの豚もも肉を丸ごと使った伝統的な「骨付きハム」や、赤身の多い「ボンレスハム」は、運動量の多いモモ肉が主原料です。これに対し、一般的なベーコンの主原料は「豚バラ肉(三枚肉)」に限定されています。あばら骨の周囲にある赤身と脂肪が交互に層を成す部位であり、これがベーコン特有の濃厚なコクと縞模様の正体です。
原料部位が異なるため、素材そのものが抱える豚ロース肉と豚バラ肉の栄養成分にも大きな隔たりがあります。豚ロース肉は赤身の中に適度な脂肪が交じる程度で高タンパクですが、豚バラ肉は重量の約3割から4割近くが脂質で占められています。この素材の選定こそが、ハムとベーコンの部位の違いであり、食感や調理時の油の出方を決定づける出発点となっています。
なお、食卓で混同されやすいハムとベーコンとソーセージの違いを整理すると、原料の形状とケーシング(皮)の有無に集約されます。ハムとベーコンが「塊肉(一枚肉のブロック)」を成形・加工するのに対し、ソーセージは「ひき肉」に調味料や香辛料を練り合わせ、羊や豚の腸(または人工ケーシング)に詰めて加熱加工したものです。肉の組織構造をそのまま残すハム・ベーコンと、組織を一度解体して再構築するソーセージという根本的な加工形態の差があります。