日本アニメーションが手掛け、フジテレビの日曜夜を象徴する看板枠となった世界名作劇場。その制作舞台裏は、まさに時間と技術の極限に挑む壮絶なドラマの連続だった。当時のセル絵の具は現代のように無限の色数を扱えるわけではなく、限られた既製品の中から最適なトーンを調合し、指定しなければならなかった。
安田美智代が貫いたのは「光の論理」だ。室内の薄暗いランプの光、乾いた南米の照りつける太陽、早朝の澄んだ空気。同じキャラクターの服であっても、シーンの天候や時間帯、心理描写によって何十通りもの色を緻密に使い分けた。当時のアニメ業界では考えられないほどの手間とコストを要する作業であり、制作進行からは悲鳴が上がったという。
しかし、彼女は一歩も引かなかった。「子供向けのアニメだからこそ、本物の光と影を見せなければならない」。その揺るぎない色彩哲学こそが、毎週お茶の間に届けられる絵物語に圧倒的な説得力と深みを与えていたのだ。