数字上のデータ以上に過酷な現実を物語るのが、実際に手綱を取る騎手たちの一次情報です。JRAのトップジョッキーたちが自著やレース後の共同会見で語る言葉には、馬場状態が精神面と肉体面に及ぼす強烈なインパクトが克明に記されています。
あるベテラン騎手は手記の中で、「雨天の芝コースで最も怖いのは、グリップが完全に抜けて馬が推進力を失う瞬間だ」と告白しています。「稍重程度なら筋力で踏ん張れるが、重から不良になって蹄の先から土がズルリと抜ける感触が出始めると、どんなに能力のある馬でも一歩ごとに体力を削られ、直線で脚を使う余力が残らない」というのです。この証言は、スピード指数や調教タイムが極悪馬場において突如として無力化する現場の真実を浮き彫りにしています。
さらに現場の大きな障壁となるのが、ダート戦における「キックバックの恐怖」です。不良馬場でコース上に水が浮くと、先行馬が跳ね上げる砂はもはや砂利ではなく「重い泥の塊」となって後続の顔面や眼球を直撃します。若手騎手がインタビューで「泥が目に入った瞬間、馬がパニックを起こして頭を上げ、手綱を引いても進んでいかなくなった」と語ったように、馬群の中で砂を被る経験が少ない繊細な馬や牝馬は、物理的なスピード以前にメンタル面でレースを投げ出してしまいます。
また、地方競馬(大井、船橋、川崎、浦和の南関東や園田、高知など)のファンコミュニティでも、雨天時のバイアスは毎日のように議論の的となっています。地方競馬各場はJRAに比べてコースの砂厚(クッション砂の深さ)が8.5cm〜10cm程度と深めに設定されている場合が多く、雨による「脚抜き」の変化がJRA以上に激甚です。地方競馬の公式サイト等で配信される「馬場状態速報」では、水分含有による白っぽい砂から黒っぽい泥への変色具合をリアルタイム中継で確認するファンが多く、現地の生の空気感こそが最大の予想材料となっています。
さらにJRAの中山競馬場などで行われる「コース替わり」の現場検証も見逃せません。公式発表資料にある通り、例えば「第4回中山競馬ではAコースから3メートル外に内柵を設置したBコースを使用する」といった柵移動が行われると、それまで荒れていた内ラチ沿いが新しい柵で隠され、突如として「内有利の高速グリーンベルト」が復活します。現場でコースの境界線を観察しているトラックマンや目の肥えたファンは、この柵移動と雨の相乗効果を冷静に見極めています。