金原ひとみ氏の芥川賞受賞作を巨匠・蜷川幸雄監督の手で実写映画化した『蛇にピアス』。劇中で吉高由里子が演じた主人公・ルイは、舌にピアスを開け、背中に龍と麒麟の刺青を彫り、暴力と快楽の狭間で自暴自棄に生きる少女です。スクリーンに映し出された生々しいベッドシーンや惜しげもなく披露された裸体は、公開当時、世間に強烈なセンセーションを巻き起こしました。
この過激すぎる描写ゆえに、インターネット掲示板やSNSでは「胸や背中のアップは別人の身体を使った吹き替え(代役)ではないか」という噂が根強く囁かれてきました。ボディダブル疑惑が浮上した主な背景には、主に3つの要因が存在します。
第1に、肌の質感があまりに滑らかであり、過激な性描写を新進気鋭の若手女優がすべて直接引き受けるはずがないという観客側の先入観があったこと。第2に、舌のスプリットタンや背中の精巧なタトゥーに高度な特殊メイクおよびCG合成技術が駆使されていたため、「肉体そのものも別人の映像を合成したのではないか」という技術的推測が一人歩きしたこと。そして第3に、後年のテレビ番組やCMで見せる天真爛漫なキャラクターとのあまりのギャップに、後追い世代のファンが困惑したことです。
しかし、映画関係者の証言や当時のメイキング記録、さらには蜷川監督自身が生前語ったコメントを照らし合わせても、ベッドシーンおよび全身の露出シーンはすべて吉高由里子本人が演じています。代役を立てることなく、一人の表現者として逃げずにカメラの前に立ち続けた事実こそが、この作品の持つ剥き出しの緊張感を支えています。