なぜ原作者の岩明均氏は、最強のパラサイトである後藤を倒した後の物語の締めくくりに、浦上という人間の快楽殺人犯を配置したのでしょうか。
それまでの物語は「地球外から現れた異種生物(パラサイト)vs 人類」という生物学的・生態系的な構図で進んでいました。しかし、後藤の死によってその脅威が去った後、最後に解決しなければならなかったのは「人間自身の心の中に巣食う怪物性との決着」だったのです。
浦上という鏡を前にして、新一は自らの暴力性や冷徹さに呑まれることなく、里美を愛し守るという「他者を思いやる心(人間性)」を選び取りました。浦上という絶対的な人間の悪意が存在したからこそ、『寄生獣』は単なるモンスターバトル漫画に終わらず、「人間とはいかなる生き物か」を証明する傑作として完結することができたと言えます。