黒死牟の人間時代の名は「継国巌勝(つぎくにみちかつ)」。戦国時代、武士の家に生まれた彼には、あまりにも巨大すぎる才能を持つ双子の弟がいた。それが、最強の剣士・継国縁壱である。生まれながらに「透き通る世界」が見え、神に愛されたかのような剣才を持つ縁壱に対し、巌勝は強烈な自尊心と激しい羨望、そして克服できない劣等感を抱き続けることとなった。
どれほど血の滲む努力を重ねても、弟の領域には届かない。その絶望が、彼を無惨の手招く「鬼道」へと踏み込ませた。寿命の限界を迎える「痣」の呪いを回避し、無限の時を得て弟を超えようとした巌勝。しかし、老境に達してもなお異次元の強さを誇った縁壱の前に、彼の執念は脆くも打ち砕かれることとなる。兄弟の間に横たわる深淵のような溝こそが、黒死牟という悲劇の根源だ。