なぜこれほどまでに保護が難しいのか。その最大の理由は、この魚が長年にわたり生態の多くを秘密のヴェールに包んでいたからにほかならない。どこで生まれ、どのようなルートを経て日本の河川へ遡上してくるのか。その神秘の解明に人生を捧げたのが、海洋生物学の権威である塚本勝巳・東京大学名誉教授らの研究チームであった。
研究チームは長年の試行錯誤を経て、日本から南へ約2000キロメートル離れた太平洋のマリアナ海溝付近で、世界で初めて天然親魚の卵を採集することに成功した。この科学的偉業は、ドキュメンタリー番組『NHKスペシャル』でも特集され、大きな反響を呼んだ。現在もNHKオンデマンドでその映像記録を視聴することができるが、深海のミステリーに挑む研究者たちの執念は、生物学史に刻まれる金字塔となった。