映画祭の現場でいま最も火花を散らしているのが、劇場公開の原則を重んじる旧来の映画人と、巨額の資金でトップクリエイターを囲い込む動画配信サービスの攻防だ。
Netflixは過去数年にわたり、卓越したフィルムメーカーと組んで三大映画祭への出品を執拗に続けてきた。これに対抗するようにHBO Maxなどの対抗馬も、映画祭を自社ブランドの権威づけと加入者獲得のための格好のプロモーション舞台として位置づけている。巨額の製作費を惜しみなく投じる配信勢の存在は、クリエイターにとって表現の自由を担保するオアシスであると同時に、劇場の存続を脅かす劇薬でもある。
とりわけフランスの興行規定や国際映画製作者連盟(FIAPF)のガイドラインを巡る対立は根深い。カンヌが劇場公開をコンペティション部門の参加条件として頑なに守る一方、ヴェネツィアは配信作品を柔軟に受け入れることで存在感を高めてきた。この温度差が各映画祭のラインナップに直結し、配給戦略そのものを複雑化させている。