不正出血の背後に器質的病変、すなわち「目に見える物理的な病気」が存在する場合、一刻も早い治療介入が求められます。特に不正出血の原因と危険なサインとして最も警戒すべきは、婦人科悪性腫瘍と子宮筋腫です。
子宮の病気は発生部位によって特徴が異なります。子宮の入り口にできる「子宮頸がん」と、子宮の奥の筋肉に包まれた内膜にできる「子宮体がん」では、好発年齢と症状の出方が大きく異なります。
子宮頸がん・子宮体がんの初期症状において、不正出血は極めて重要かつ最初の自覚症状です。子宮頸がんは20代後半から40代の若い世代に多発し、初期には「性交時の出血」「排便時のいきみによる出血」「スポーツ後の出血」など、接触刺激による出血として現れるケースが目立ちます。一方、子宮体がんは50代以降の閉経前後にピークを迎えます。「閉経して数年経つのに再び生理のような出血があった」「おりものに赤や茶色の筋が混じる」という場合、子宮体がんを強く疑う必要があります。国立がん研究センターの統計データによると、閉経後の不正出血の約10〜15%に子宮体がんなどの悪性病変が発見されており、「年齢的なものだろう」と放置することは致命傷になりかねません。
良性腫瘍の代表格である子宮筋腫とレバー状の血の塊の関係にも注意が必要です。子宮筋腫、特に粘膜下筋腫と呼ばれる子宮内腔に突き出すタイプの筋腫が存在すると、子宮内膜の表面積が広がり、子宮の収縮力も低下します。その結果、生理の出血量が異常に多くなる「過多月経」が起こり、血液をサラサラにする酵素の働きが追いつかず、親指大以上のレバーのような凝固した血の塊が頻繁に排出されるようになります。ひどい貧血による立ちくらみや息切れを自覚して受診し、巨大な筋腫が見つかる例は後を絶ちません。
また、40代半ばから50代にかけて直面する更年期の不正出血と生理不順は、卵巣機能の急激な低下によって卵胞刺激ホルモン(FSH)が乱高下し、無排卵周期による機能性出血が起きやすくなります。しかし、この年代は同時に子宮体がんの罹患率が急上昇する危険ゾーンと完全に重なっています。「更年期だから生理が乱れて当たり前」と決めつけるのは極めて危険な思い込みです。