梨園の妻の役割を一言で表すなら、「個人事務所の社長兼マネージャー兼広報」です。夫が舞台の上で芸に集中できるよう、舞台裏のあらゆる雑務と人間関係の調整を完璧にこなさなければなりません。
主な仕事内容は多岐にわたります。初日や千秋楽における劇場ロビーでのご贔屓筋(ごひいきすじ)への挨拶回り、チケットの手配や座席の割り振り、お中元・お歳暮の差配、冠婚葬祭の礼状書き、さらには夫の食事管理や健康維持まで、年中無休でこなす必要があります。
とりわけ過酷なのが興行期間中です。歌舞伎の公演は1ヶ月近く続くことが多く、その間は朝早くから着付けを整えて劇場に入り、終演後も関係者への挨拶や楽屋の手伝いに追われます。自分の体調不良を理由に休むことは許されず、常に完璧な笑顔と気配りを保ち続けるタフさが要求されます。