都内の片隅にある小さなイベントスペース。ここでは、ただひたすらに「古い換気扇が回る音」だけを流す集会が満席を記録している。参加者は一言も発さず、ただその低周波のノイズに耳を澄ませる。かつてなら「変わった人たちの奇妙な集まり」で済まされた光景が、今や数万人のフォロワーを抱える一大カルチャーだ。
食の世界でも同様の地殻変動が起きている。激辛やパクチーといった定番を超え、今や「泥の香りがするハーブ」や「発酵しすぎて酸味しか残っていない調味料」を愛好するバーが活況を呈している。他者から見れば理解しがたい「苦味」や「違和感」こそが、彼らにとっての至上の快楽なのだ。