鈴木拡樹の名を演劇史に深く刻み込んだ最大の転機が、2016年に幕を開けた舞台『刀剣乱舞』(刀ステ)シリーズの三日月宗近役です。名立たる刀剣のなかでも「天下五剣で最も美しい」と称される難役に対し、彼は優雅な立ち振る舞い、軽妙な佇まいの奥に潜む底知れない凄みを完璧に具現化しました。
ファンの間や舞台関係者の間で語り草となっているのが、その徹底した所作の美しさと憑依型の演技力です。羽織の翻し方から抜刀・納刀のスピード、視線の落とし方に至るまで一切の無駄がなく、舞台上に立っているだけで劇場の空気を一変させる支配力を持っています。
共演者からも「稽古場での居姿からすでに役そのもの」「背中で語る座長」として絶大な信頼を寄せられており、単なるビジュアルの再現にとどまらない、役の内面を極限まで掘り下げるアプローチこそが、長年にわたる高評価の源泉といえます。