フィリピンの台風史において、世界中に衝撃を与えた象徴的事例が2013年11月の「スーパー台風ハイエン(現地名:ヨランダ / Yolanda)」です。中心気圧895hPa、最大瞬間風速87.5m/sという観測史上類を見ない勢力でレイテ島タクロバンを直撃し、高潮と暴風によって死者・行方不明者7,300人以上、被災者1,600万人超という甚大な被害をもたらしました。
現地赤十字社や国連支援機関の記録によると、被害の多くは家屋の倒壊だけでなく、海抜の低い沿岸部に押し寄せた5メートル超の高潮によるものでした。この惨禍以降、フィリピン政府は警報システムを従来のシグナル1〜4から「シグナル5(超大型台風)」を新設し、住民の事前避難(プレ・エンペティブ・エバキュエーション)を義務付けるなど防災体制を抜本的に見直しました。
しかし、近年の台風被害を見ても、インフラの構造的脆弱性は完全には解決していません。近年の大型台風上陸時にも、電柱の倒壊による数週間単位の広域停電や、通信タワー破損による携帯電話ネットワークの完全途絶、給水制限が発生しており、都市・地方を問わずライフラインの麻痺が最大のリスク要因となっています。