伝説的なボイストレーナーであるSeth Riggsが考案した「Speech Level Singing(SLS)」メソッドは、世界中のシンガーに絶大な影響を与え続けている。彼の論理の中核にあるのは、話し声と同じくらいリラックスした状態を歌唱時にも維持するという考え方だ。
このアプローチにおいて鍵を握るのが、みぞおちの奥に位置する横隔膜の柔軟性である。横隔膜が柔軟に動くことで、力みのない息の供給が可能になり、喉頭の位置が安定する。喉頭が上がってしまうと声帯は収縮し、高音域で詰まった「喉声」になってしまう。息の力で声を押し出すのではなく、横隔膜の滑らかな動きで空気のストロークをコントロールする。これこそが高音を自在に操る物理的メカニズムだ。