漫画の実写映画化において、最もキャスティングのハードルが高いとされるのが「完璧に見えて内面に深い挫折を抱える二番手キャラクター」です。末次由紀氏による原作『ちはやふる』における真島太一は、容姿端麗・学業優秀・スポーツ万能でありながら、かるたにおいては天才・新に遠く及ばず、千早への想いも届かないという、極めて人間臭い業を背負った人物でした。
製作発表当時、ネット上ではワイルドでストリート感のあるパブリックイメージを持たれていた野村周平に対し、「優等生で繊細な太一のイメージと異なるのではないか」という一部ファンの声もありました。しかし、映画『ちはやふる -上の句-』の幕が上がると、その評価は180度覆ることになります。
小泉徳宏監督が演出で見出したのは、野村周平が持つ天性のクレバーさと、強がりの裏にある剥き出しの脆さでした。千早を見つめる切ない眼差し、新の圧倒的な才能を前に唇を噛み締める表情、そして「青春全部懸けたって強くなれない」という痛切な台詞の吐露。原作の持つエッセンスを損なうことなく、生身の人間の生々しい痛みとして昇華させたことで、原作ファンからも「太一そのものだった」と惜しみない賛辞が送られました。