作品の「所有」だけでなく「体験」としての価値が高まるなかで、美術館や芸術祭が果たす役割も大きく変化している。現代美術の殿堂として君臨するニューヨーク近代美術館(MoMA)は、AIやアルゴリズムを用いたデジタル表現、パフォーマンスアート、コミュニティ主導のプロジェクトを積極的にコレクションに取り入れ、時代の先鋭的な試みを常に出示し続けている。
日本国内に目を向ければ、地域社会とアートが深く交差する瀬戸内国際芸術祭が世界的な注目を集めている。過疎化の進む島々を舞台に、自然のロケーションや歴史的遺産と一体化した空間作品を展開することで、都市型の展示空間では味わえない唯一無二の芸術体験を提供してきた。美術館の壁を飛び越えた体験価値の創出は、コレクターだけでなく一般の鑑賞者にとってもアートとの関わり方を根本から変えつつある。