初対面の挨拶として「Nice to meet you.」と手を差し伸べられた際、日本人が真っ先に口にしてしまいがちな「Me too.(私も)」。文法的に通じないわけではないように思えますが、英語教育機関や言語学者への取材調査によると、ネイティブスピーカーの約9割がこの返答に対して「違和感や居心地の悪さを覚える」と証言しています。
その背景には、英語の「主客の省略構造」という決定的なメカニズムが存在します。そもそも「Nice to meet you.」という挨拶は、完全な文に復元すると次の形になります。
(It is) nice to meet you.(あなたにお会いできて嬉しいです)
この文において、相手は「you(あなた)」に会えたことを喜んでいます。これに対して聞き手が「Me too.」と答えた場合、文法的に省略されているのは「me(私)」の部分です。つまり、相手の発言構造を引き継いで「(It is nice to meet) me, too.」、直訳すると「私も(私自身に)会えて嬉しいです」という、極めて自己愛の強い奇妙な告白として響いてしまうのです。
あるいは、「私も(別の誰かに)会えて嬉しい」と第三者の存在を連想させる不自然なニュアンスを生むこともあります。日常会話の「I love coffee.(コーヒーが好き)」に対して「Me too.(私も好き)」と答える文脈では主語が共通しているため成立しますが、「meet you」のように相手を対象に取る動詞表現では、主客のねじれが一瞬で生じてしまいます。相手に失礼な意図がなくても、「英語のやりとりに慣れていないぎこちなさ」を相手に印象づけてしまう要因はここにあります。