SNSやネット掲示板で目にする「パキ」「パキる」には、大きく分けて2つの文脈が存在します。ひとつは、大量のカフェイン摂取や気合いの入った状態で「頭が冴え渡る」「目がパッチリと開く」という覚醒状態を表すスラングとしての用法です。「エナドリ飲んでパキってきた」「明日の試験に向けてパキパキに集中する」といった形で、テンションを高めるポジティブな表現として一部の若年層に消費されています。
しかし、この言葉の根底にあるもうひとつの意味は、はるかに暗く深刻です。医療現場や警察関係者、社会問題を取材するメディアの間では、「パキる」は精神安定剤や咳止め薬などの市販薬を大量に飲むオーバードーズ(OD)行為、あるいは薬物の過剰摂取によって酩酊・多幸感・幻覚に陥る状態を指す隠語として定着しています。
言葉の浸透プロセスを辿ると、元々はアンダーグラウンドな薬物乱用コミュニティで使われていた隠語が、TikTokやX(旧Twitter)のショート動画、インフルエンサーの投稿を経由してポップに脱色され、意味のグラデーションを持ちながら一般層へ拡散した経緯が浮かび上がります。「単なる元気が出る合言葉」として面白半分で使う若者がいる一方で、その背景には命に関わる依存症問題が地続きで存在しているのが実情です。