世界的な脚光を浴びる濱口竜介監督のオムニバス映画『偶然と想像』に出演したことは、俳優・中島歩のキャリアにおける決定的な転換点となった。第71回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(審査員グランプリ)を受賞した同作において、彼の抑制された台詞回しと微妙な表情の変化は、国内外の映画批評家から激賞を受けた。
この成功は、米アカデミー賞を制した『ドライブ・マイ・カー』へと連なる日本映画界の新たな潮流と完全に共鳴している。自然主義的な会話劇の中で、人間のエゴや愚かさ、そして愛おしさを淡々と体現できる中島の存在は、作家性の強い映画監督たちにとって手放せないピースとなった。国際舞台での評価が高まるにつれ、浮ついたゴシップ記事よりも作品そのものが雄弁に彼の存在価値を物語るようになっている。