一般によく混同されるのが「過呼吸(過換気症候群)」と「頻呼吸」の違いです。日常会話ではどちらも「息が荒い」「息苦しい」と一括りにされがちですが、呼吸生理学の観点からは明確に異なるメカニズムで生じています。
日本呼吸器学会の公式資料によると、過呼吸(過換気)とは「呼吸の回数にかかわらず、呼吸運動の深さ(1回換気量)が異常に増大した状態」を指します。不安やパニック発作などによって深い呼吸を過剰に繰り返した結果、体内の二酸化炭素(CO2)が過剰に排出され、血液がアルカリ性に傾くことで手足のしびれや筋肉の硬直(テタニー症状)を引き起こします。
一方の頻呼吸は、回数そのものが異常に増加し、「息が浅く、せわしなく小刻みになる」のが本質的な特徴です。体内の酸素不足を補おうとしたり、血液中に蓄積した酸性物質を必死に排出しようとしたりする生体防御反応として発現します。そのため、過呼吸に対して行われていたようなペーパーバッグ法(紙袋を口に当てる処置)を頻呼吸の患者に施すと、二酸化炭素が蓄積し酸素がさらに欠乏して窒息死を招く極めて危険な行為となります。