犬のてんかん発作は、脳内の神経細胞(ニューロン)が過剰に興奮し、電気的な嵐が一過性に発生することで引き起こされます。発作の背景には大きく分けて「特発性てんかん」「構造性てんかん」「反応性発作」の3つの病態が存在します。
若い年齢(主に1歳から6歳前後)で初めて発作を起こした場合、最も疑われるのが特発性てんかん犬の症状です。MRI検査や脳脊髄液検査、血液検査を行っても脳の構造自体には明らかな異常が認められず、遺伝的素因や脳神経の微小な機能異常が関与していると考えられています。ゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバー、ボーダー・コリー、フレンチ・ブルドッグ、ミニチュア・ダックスフンド、トイ・プードルなどの犬種で発症頻度が高い傾向が知られています。
発作には、全身が激しく硬直して意識を失う「全般発作(大発作)」だけでなく、体の一部や行動にのみ異常が出る「焦点発作(部分発作)」もあります。何もない空間をハエでも追うように口をパクパクさせる「フライバイティング」、突然片足だけをピクピクと跳ね上げる、無目的に旋回し続けるといった動作もてんかん性の異常興奮による症状です。
発作の直前には、犬のてんかん発作の前兆(前兆期・前駆期)と呼ばれる行動変化が現れるケースが珍しくありません。発作が起きる数分から数時間前に見られる兆候として、以下のような変化が報告されています。
- 落ち着きがなくなり、部屋中をそわそわと歩き回る
- 飼い主に異様な執着を見せてすり寄ってくる、あるいは逆に物陰に隠れようとする
- 過剰によだれ(流涎)を垂らす
- 何かに怯えたように視線が定まらず、空を見つめる
- 軽い震えやふらつきが見られる
これに対して、7歳を過ぎたシニア期に入ってから初めて発作を起こした場合、話は全く異なります。老犬のてんかん発作原因の大半は、脳そのものに器質的な障害が生じている「構造性てんかん」、あるいは内臓疾患に伴う「反応性発作」です。具体的には脳腫瘍(髄膜腫や神経膠腫など)、脳梗塞や脳出血といった脳血管障害、肉芽腫性髄膜脳炎(GME)などの炎症性疾患が挙げられます。また、重度の肝不全による肝性脳症、腎不全による尿毒症、インスリノーマ(膵臓腫瘍)による重篤な低血糖も、脳に強い痙攣発作を誘発します。老犬の初発痙攣は一刻を争う基礎疾患のサインであることが多いため、緊急の精密検査が不可欠です。