「八咫烏とは、皇室を影から護衛する実在の秘密結社である」――ネットの掲示板や都市伝説ファンの間で、まことしやかに囁かれ続けてきた噂がある。いわゆる「裏神道」と呼ばれる非公式な組織としての八咫烏説だ。古代から続く神職の血脈が密かに結集し、国家の重大な危機や皇室の祭祀を裏で取り仕切っているのだという。
こうした都市伝説が絶えない背景には、熊野修験や陰陽道、さらには古代の神社神道が持つ秘教的な奥深さがある。歴史学者や民俗学者の見解によれば、秘密組織としての八咫烏を裏付ける公的な歴史資料は存在しない。しかし、熊野の深い山々に伝わる修験者の秘密儀礼や、非公開とされる神事の存在が、人々の想像力を掻き立てる格好の材料となってきたのは事実だ。現実の神道史とフィクションの境目が曖昧になる点にこそ、八咫烏という存在が秘める抗いがたい魔力が潜んでいる。