重量4トンクラスの神輿が狭い下町の路地を埋め尽くす鳥越祭の夜、現場の空気は異様な緊張感に包まれる。鳥越神社の「千貫神輿」が放つ重圧は凄まじい。担ぎ手一人あたりの肩にかかる負荷は数十キロに達し、一歩足を踏み外せば大事故に直結する。
「神輿ダコ」と呼ばれる硬化した肩のコブは、幾多の渡御をくぐり抜けてきた男たちの勲章だ。重厚な木組みがギシギシと音を立てるたび、数百人の呼吸が一つに合致する。重ければ重いほど、それを持ち上げた瞬間の歓喜と連帯感は爆発的なものになる。肉体の限界を超えた先にあるトランス状態こそが、人々を祭りの虜にする根源的な理由だ。