「妥協という文字は現場に存在しない」。美術スタッフのひとりはそう断言する。セットの柱一本、衣装のほつれ一つに至るまで、当時の生活感と土の匂いが徹底して再現されている。かつて東映の太秦や黒澤組が徹底したリアリズムへの執念が、このプロジェクトで完全に甦っているのだ。
俳優陣に課される要求も並大抵ではない。台詞を喋る前に、まずその時代を生きる人間としての呼吸を身体に叩き込む。かつて名優たちが極寒のロケ地で見せたような、極限状態でのみ宿る眼光の鋭さをカメラは狙い撃つ。安全策に逃げがちな現代の映像制作に対する、強烈なアンチテーゼと言えるだろう。