レース直後、競馬場内の診療所に緊急搬送されたサイレンススズカに下された診断は、「左前手根骨粉砕骨折」およびそれに伴う関節脱臼でした。骨が粉々に砕け散り、腱や血管も重篤な損傷を負っている極めて致命的な状態でした。
一部のファンからは「なぜ手術して種牡馬として生かせなかったのか」という疑問の声も上がりましたが、競走馬医学の観点から見れば、生存を試みること自体が馬にとって極めて過酷な拷問になり得る状態でした。500キロ近い体重を持つサラブレッドは、3本脚で体重を支え続けることが構造上できません。1本の脚を完全に失うと、残された健全な脚(特に対角線上の脚)に過度な負荷が集中し、蹄の内部が腐敗・壊死する激痛の病気「蹄葉炎(ていようえん)」を併発します。
JRA獣医師団および管理調教師である橋田満氏らの協議により、これ以上の延命は耐え難い苦痛を長引かせるだけであると判断され、日本中央競馬会競馬施行規程に基づく予後不良(安楽死処置)が正式に決定。同日夕刻、薬品投与による苦痛のない安楽死が執行されました。