ネット上の情報や一部の誤った解説記事には、「死亡診断書のコピーさえあれば、銀行預金の解約や不動産の名義変更まで全て完了する」といった極端な誤解が見受けられます。これは実務上、明確な誤りです。
死亡診断書はあくまで「その人物が、いつ、どこで、どのような医学的原因で死亡したか」を医師が証明する医学的・事実的記録に過ぎません。「誰が法的な相続人であるか」を証明する機能は一切備わっていません。
したがって、法的な権利移転が伴う以下の手続きでは、死亡診断書のコピーではなく戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍)一式が法律上必須となります。
- 被相続人の銀行口座の解約・払戻し:法定相続人全員の合意を確認するため、出生から死亡までの連続した戸籍謄本が要求されます(※死亡の事実を知らせて口座を一旦止める初期段階のみ、死亡診断書コピーで代用可能)。
- 法務局での不動産相続登記(名義変更):法定相続人を特定し、遺産分割協議書や遺言書と照合するため、公的な戸籍原本の提出が不可避です。
- 家庭裁判所での相続放棄・遺産分割調停:相続関係を厳密に公証するため、除籍謄本および申述人の戸籍謄本が必須となります。
役所に死亡届を出してから新しい戸籍謄本(死亡の旨が記載された除籍謄本)が発行可能になるまでには、通常1週間から10日前後のタイムラグが生じます。この「戸籍が完成するまでの空白期間」において、急ぎの民間契約解約や保険会社への事前申請を進めるための最重要ツールが「死亡診断書のコピー」なのです。