インターネット上の掲示板やSNSでは、特定の著名人や芸能人の顔写真を取り上げ、「目が離れている」「人中が平らだからFASではないか」と断定的に語る投稿が散見されます。しかし、胎児性アルコール症候群の芸能人に関する噂の真相は、医学的根拠をまったく欠いた無責任な憶測に過ぎません。
そもそも東アジア人の顔骨格は、先天的・遺伝的に蒙古襞が発達しやすく、鼻根部が低いために両眼の間隔が広く見える傾向があります。また、上唇の厚さや人中の深さには大きな個体差があり、美的な個性や遺伝形質を病的な顔貌と短絡的に結びつける行為は極めて危険です。
医療的な診断は、高解像度の3次元画像解析や専門医による直接の計測、さらには詳細な周産期情報をもとに行われるものであり、画面越しの静止画から素人が判定できるものではありません。安易なラベリングは不当な偏見や差別を生み出すだけでなく、真に支援を必要とする当事者やその家族への偏見を助長する行為であることを強く認識する必要があります。
【プロの結論】偏見の排除と正しい知識がもたらす社会的セーフティネット
アルコール関連障害の歴史を振り返ると、母親への道徳的断罪や当事者への容姿差別という負の側面が常に付きまとってきました。しかし、重要なのは過去を裁くことではなく、「防ぎ得た障害への正しい知識の普及」と「すでに生まれた命に対する無条件の包括的支援」を両立させることです。
母親一人にすべての責任を押し付けるのではなく、妊娠を取り巻く周囲の環境やパートナーの飲酒習慣も含めた家族全体の課題として捉え直す視点が、健やかな社会形成には欠かせません。