衣服の素材特性を無視した処置は、生地の脱色や繊維の破断を招きます。最もトラブルの多い体操服についた墨汁の汚れ落としでは、素材がポリエステル主体か綿100%かによって挙動が異なります。化学繊維であるポリエステルは繊維表面が滑らかなため、カーボン粒子が深部まで浸透しにくく、固形ウタマロ石鹸やクレンジングオイルを用いたもみ洗いで90%以上の汚れを低減できます。
体操服の染み抜きを行う際の具体的な手順は以下の通りです:
1. シミの裏側に不要なタオルを敷き、表面から中性洗剤またはクレンジングオイルを塗布する。
2. 歯ブラシの毛先を使い、上からトントンと軽く叩いて下のタオルに墨を移す。
3. ウタマロ石鹸を直接塗り込み、40℃前後のぬるま湯で優しく揉み出す(熱湯は膠を固めるため厳禁)。
4. 黒い泡を水で完全に洗い流し、最後に通常の洗濯機洗いに投入する。
一方で、ウール製の学生服(ブレザーやスラックス)、シルク、あるいは正絹の着物などに墨汁が付着した場合は、自宅での水洗いや揉み洗いは絶対に避けなければなりません。水分の浸透によって「縮み」や「激しい輪ジミ」が発生し、修復不可能な状態に陥るリスクが高いためです。