2003年と2011年に見舞われた二度の脳梗塞。過酷な後遺症とリハビリに向き合いながらも、西城秀樹が歌の現場を離れることはなかった。旅立つ直前となった2018年4月、栃木県足利市などで開催された『同窓会コンサート』のステージ。そこが、彼が公にその歌声を響かせた最後の舞台となった。
舞台袖の空気は極度の緊張感に包まれていた。当時のスタッフはこう振り返る。「出番直前まで椅子に深く腰掛け、呼吸を整えていました。身体には相当な痛みと倦怠感があったはずです。しかし、イントロが鳴り響いてスタッフの手を借りて立ち上がった瞬間、目の色が完全に切り替わった。自らの足で一歩ずつステージ中央へと歩みを進めたのです」。
声が思うように出ないもどかしさを抱えながらも、客席に笑顔を向け、精いっぱいの身振りで客席とコール&レスポンスを交わす。その姿は痛々しさなど微塵も感じさせない、誇り高きエンターテイナーそのものだった。「ファンの前で倒れるなら本望」。常日頃から周囲に漏らしていたその覚悟が、ラストステージの奇跡的な熱量を生み出していたのである。