「掘っても掘っても崩れてくる。あの暗闇の中での緊張感は一生忘れられない」
古くからの作業員はそう振り返る。湧水と破砕帯が交錯する極限状態の中で、工法を変更しながらミリ単位の掘進を続けた現場の裏側には、知られざるドラマがあった。膨大な建設資材の搬入と厳しい安全基準。現場を支えた作業員たちの執念が、この難工事を支え抜いたのだ。
さらに注目すべきは、坑口周辺の環境意匠だ。世界的な建築家・安藤忠雄氏の建築思想に通底する「自然と構造物の調和」が取り入れられ、無骨なトンネル坑口が鈴鹿山脈の美しい山並みと自然に融合する造形となっている。単なる通行用の穴ではなく、景観そのものを高める芸術作品としての側面を併せ持つ。