当時の刑事ドラマにおいて「レギュラー刑事の殉職」は番組の起爆剤として頻繁に使われる手法でした。しかし『特捜最前線』における殉職劇は、単なる視聴率稼ぎのイベントではなく、「命の重みと暴力の理不尽さ」を痛烈に突きつけるものでした。
なかでもファンの間で衝撃的だったのが、第147話・第148話「殉職Ⅰ・Ⅱ」で描かれた津上明刑事(荒木しげる)の殉職です。荒木さんの他作品への出演スケジュール等の事情による降板という背景はあったものの、劇中では時限爆弾の爆発に巻き込まれ、瀕死の重傷を負いながらも最後まで職務を全うしようとする姿が描かれました。美化された死ではなく、肉体が破壊され命が失われていく現実を容赦なく描写したこのエピソードは、視聴者に強烈なトラウマと深い余韻を残しました。
さらにシリーズ終盤の第508話では、知性派として活躍した叶高士刑事(夏夕介)が凶弾に倒れます。最終回直前に起きたこの悲劇は、特命課の刑事たちに「正義を守ることの過酷さ」を改めて突きつけ、ラストの特命課解散へと繋がる決定的な契機となりました。