昔から広く信じられてきた「熊に遭遇したら死んだふりをすればやり過ごせる」という説は、現代の野生動物学において完全な誤りと断定されています。人間がその場に倒れ込んで無防備な状態を晒すと、熊は対象を「反撃能力のない獲物」または「興味深い物体」と認識し、かじりついたり弄んだりする行動へと発展するためです。
実態検証として、もし目の前に熊が現れた場合は、距離と状況に応じた冷静な初動が求められます。最優先すべきは、大声を上げたり背中を向けて走って逃げたりしないことです。熊は逃げるものを反射的に追いかける捕食本能を有しており、時速40〜50キロメートル以上で疾走するため、人間が走って逃げ切ることは不可能です。
基本となるのは、「熊から目を離さずに、ゆっくりと後退して距離を取る」行動です。視線を合わせたまま(凝視して威嚇と受け取られないよう視野全体で捉えつつ)、静かに後ずさりを行い、熊との間に立ち木や大岩などの障害物を挟む位置関係を確保することが生還への第一歩となります。