岩手県立美術館の最大の強みは、なんといっても郷土ゆかりの美術界の巨人たちによる傑作群です。常設のコレクション展では、日本の近代洋画および彫刻史を語る上で欠かせない作家たちの作品が体系的に展示されています。
日本フォーヴィスムの先駆者として知られる萬鉄五郎(よろず てつごろう)の作品群は、激しい筆致と強烈な色彩対比が鑑賞者の目を釘付けにします。代表作『もたれて立つ人』をはじめ、キュビスムや南画へと果敢に表現領域を広げていった実験精神の軌跡を間近で体感できます。
一方で、太平洋戦争下の激動期に静謐かつ都会的な詩情を描き続けた松本竣介(まつもと しゅんすけ)の展示室では、独特の透明感と哀愁をたたえたブルーの階調に包まれます。代表作『立てる像』や『街』など、線の繊細さと構築的な美しさは、今なお若い世代の鑑賞者の心を揺さぶり続けています。
さらに、彫刻界の至宝である舟越保武(ふなこし やすたけ)のブロンズ像や大理石像も見逃せません。『原の城』やキリスト教信仰に根ざした敬虔な人物彫刻は、静かな祈りと凛とした気品を放ち、空間全体に厳かな空気感をもたらしています。これらの国宝級とも称される所蔵作品が一堂に会する贅沢さこそが、全国からアートファンが盛岡へと足を運ぶ最大の動機となっています。