プロの料理人たちは、小さじという曖昧な道具をどのように手懐けているのだろうか。名門として知られる辻調理師専門学校の調理実習では、計量スプーンを使う際の「すり切り」の基本を徹底的に叩き込む。スプーンの縁を使って山盛りの塩を平らにならす際、上から押し固めてはならない。軽くすり切ることで、常に一定の空気含有量を保つのが鉄則だ。
一方、家庭料理の第一人者である栗原はるみ(料理研究家)は、計量スプーンを重宝しつつも、自らの「手ばかり(指先でつかむ感覚)」を研ぎ澄ます重要性を説く。小さじ1杯を計る前に、自分の指でつまんだ量が何グラムなのかを一度キッチンスケールで測っておく。このトレーニングを一度行うだけで、指先が精密なセンサーへと進化する。
プロが失敗しないのは、計量器具の癖を知り、自分の身体感覚と道具の数値を一致させているからにほかならない。