もっとも、技術革新が常に称賛ばかりで迎えられたわけではない。2010年南アフリカ大会で投入された「ジャブラニ(Jabulani)」は、大会史上で最も激しい議論を呼んだ一球として記憶されている。「祝福」を意味する名とは裏腹に、無回転シュートやロングパスが空気中で予期せぬ揺れを見せ、世界各国のゴールキーパーたちから激しい非難を浴びた。
わずか8枚の立体パネルで構築されたジャブラニは、表面があまりに滑らかすぎたために、空気抵抗の非連続性を生み出してしまう結果となったのだ。だが、この苦い経験こそが空力学の研究を深化させる大きな推進力となった。続く2014年ブラジル大会の「ブラズーカ」では、パネル表面に微細な凹凸(ディンプル加工)を施すことで、どんなキックでも安定した飛行軌道を描くバランスを手に入れた。