実は、劇場公開版のカット割りには、海外の試写会で物議を醸した「幻の15分間」が存在する。海外の映画関係者の間で密かに語り継がれていた未公開シーンでは、主人公二人の過去に隠された絶望的な断絶が、生々しく描かれていたという。あまりの緊迫感と精神的負荷の高さから、劇場公開時にはあえてカットされたとされる。
撮影現場からの裏話によれば、濱口監督はキャストに対して極限まで感情を追及するリハーサルを何度も重ねたという。有村架純はインタビューで、「自分の演技の輪郭が溶けていくような感覚だった」と語っている。監督とキャストが極限状態のなかで作り上げた未公開テイクの存在が、本作の神秘性をさらに高めているのは間違いない。