連日のように揺れが報じられると、「日本全体で異常な数の地震が起きている」と感じてしまいがちです。しかし、気象庁の統計データを長期スパンで分析すると、日本列島周辺ではマグニチュード(M)4〜5クラスの地震が年間千回以上発生しており、数週間から数か月単位で特定の地域に揺れが偏る現象は地球物理学的に珍しくありません。
人間側の認知バイアスも影響しています。近年は震度1〜2の微小な揺れであっても即座にスマホアプリやニュース速報で通知されるため、心理的に「以前より圧倒的に増えた」と知覚しやすい環境が整っています。ただし、体感的な錯覚だけで片付けられない側面もあります。フィリピン海プレートと太平洋プレートが沈み込む境界付近では、定常的に強いひずみが蓄積され続けているのが事実です。
気になる「南海トラフ地震の前兆か」という点について、地震調査研究推進本部の評価では、今後30年以内の発生確率は70〜80%と極めて高い水準を維持しています。しかし、気象庁が設置している「ひずみ計」などの観測機器群において、プレート境界の急激な固着剥がれや前兆的な異常すべり(スロースリップ)が連動して確認されたわけではありません。局所的な地震が即座に南海トラフへ直結するわけではないものの、いつ巨大地震が起きてもおかしくない緊張状態にあること自体は揺るぎない事実です。