泉涌寺の塔頭の一つである今熊野観音寺は、西国三十三所観音霊場の第一番札所(番外)としても知られる名刹だ。その歴史は、弘法大師 空海がこの地で真言密教の霊場を開いたことに始まる。大師が彫り上げた伝承をもつ十一面観音菩薩像は、頭痛封じや知恵授けのご利益で全国から深く信仰を集めてきた。
秋が深まると、今熊野観音寺の境内は言葉を失うほどの鮮やかな彩りに包まれる。朱塗りの医王橋(鳥居橋)を覆い尽くすようにカエデが色づき、緑から黄、そして深紅へと移り変わるグラデーションは圧巻だ。清水寺や嵐山のような人波に揉まれることなく、じっくりと紅葉の美しさに没入できるのは、今熊野ならではの贅沢な体験だろう。