当時、公式に発表された死因は「急性冠不全」だった。これは心臓を養う冠動脈の血流が急激に悪化し、心停止に至る病態を指す。しかし、この診断名は当時の医療現場において、突然死の原因が特定しきれない際によく使われる、いわば広義の病名でもあった。
解剖の結果や当時の状況を詳細に振り返ると、単なる心臓麻痺ではない別の影が浮かび上がる。それが、肺の血管に血栓が詰まる「肺塞栓症」である。手術後の安静期間中に足の静脈などにできた血の塊(血栓)が、起き上がって動き出した瞬間に血流に乗って肺へと流れ込み、太い血管を完全に塞いでしまったのだ。これが現代の専門医たちが指摘する有力な見立てである。